題詠 赤いドレス
題詠 赤いドレス
そこにいた、華やかな服が似合う女性が、赤いドレス(のような服)を着ていたので、それがお題になった(ようなことだったと思うけど、違ったかな)。
よくあるその場のノリ、みたいなことで「その女性を口説くつもりで作りなよ!」みたいに言われた。
僕はまあ、よせばいいのに、「やってやろうじゃないの」と握りこぶしを作り、スマホ片手に文字を打つが、口説こうとしているのに、最初から叶わない恋の想像しかできなかった。百人一首のせいか、それとも僕が常に持つ自信のなさのせいか。
赤いドレスを着るような女性は、どう考えたって、僕には高嶺の花だ。華やかな服装の女性はいつだって、遠い存在のように思える。
情熱的な色よりはアースカラーのが好き、というような色の趣味の話ではなく、文字通り、華がある人が、僕との距離を遠ざける。
「華やかさ」が似合う人に僕は似合わない、と思ってしまう。
口説くより前に、その距離を縮めたいものだ。
もしも彼女が、赤いドレスを着ていなかったらどうだろう、と考える。毎日ドレスを着ていたら疲れてしまうのではないか。
どこかで「華やかさ」を脱いで、自然体でいる場面があるかもしれない。シャツにジーパンとか、カットソーに長めのスカートだとか。それはなんだか、僕に近くなる気がする。
降りてきたんじゃないか。
高い峰から、僕の住む平地のほうに。
でも、でもきっと、どんな華やかな女性も、大切な人の前では、むしろスエットとかジャージとか、コンビニに行くような恰好をしているんだろう。
誰かの大切な存在であるのは、難しい。
恋をした女性がいたら、その人が華やかであれば華やかであるほど、赤いドレスよりも、だらしのない恰好、ゆるみきった服装、ふしだらな油断した格好を見たい。
むしろ見せてほしい。
僕の前だけは、油断していいよ、といいたい。
残念ながら、僕の前でだらしのない恰好を平気でする人には、なかなか出会えない。
華やかな彼女も、僕ではない大切な人の前では、だらしなかったりするんだろうか。
僕ではない、大切な人の前では。
苦しいよ隣にいるのは誰だろう赤いドレスを着替えた君の