いつかの断片 (2)
「おーい、ふつーの佐藤くん」
「って言われて、佐藤正男くんはふりむいたんだよ。なんかさ、え、なにそれ?って思ったわけ。だってわかんないじゃん、その時点では。俺も佐藤だし正男くんも佐藤なんだから。だから、きいたわけ、え、なんで振り向いたの? それは、アレ? 俺よりはふつーっぽいってこと?あるいはふつーイコール正男くんのアイデンティティなの?って」
「いや、とりあえず佐藤ってきこえたんでふりむきました」
「あ、そう。でも、じゃあ、ふつーの佐藤であることに迷いはなかったんだね?」
「そうですね」
「え、あ、そうなんだ。え、だとするとさ、佐藤くんを普通たらしめているのはなんなの?」
「てか!」
「え」
「てか智治はさ、ふつーだと思ってるわけ!?」
「え、ふつーである可能性はあるよね」
「いや、変だろお前は。なあ正男くん」
「え、あ、わかんないです」
「いやいや、でもあの段階ではさ、わかんないじゃん?って、話をしてるわけ。っていうかまずその区別なんだよ!名前で分けろよ!」
「いや、お前は変な佐藤だからさ。あ、これほめ言葉じゃないから」
「わかるし」
「え、でも変って言われてちょっと喜んでる感じあるよね?」
「ねえし!」
「変って言われてちょっと嬉しいの、別に変じゃないから。個性的って言われて嬉しい感じに思うのは天才と狂人が紙一重みたいな都市伝説を信じた新世代の勘違いで、俺ら
その世代だから別に、ふつーだから。喜ぶのは。でも俺の言ってる変って言うのは喜んでる場合じゃないぐらいの、変っていうことだから。気狂いって言われて喜んでるようなもんだから。それで喜ぶのは、ちょっと、キモいから、やめときなよ」
「なんか、よくわかんねえけど?」
「だって君さあ、人じゃないでしょ?」
「は?」
「‘変’でしょ?」
「ん? なに? わかるようにいって」
「だるいな」
「は? え、ちょ、いまのきいた? こいつのいまの、きいた?」
「きいてないです」
「いや、そこきけよ」
過去のiPhoneのメモ。
(読みながら、改行したせいで更新されてしまい、日付不明)
今日の東京の感染者数 三二七人