アオアルキルキア

不定期連載

戯曲のメモ

A


校舎の裏、まりとあみが二人、体育座りして、向かい合っている。まり、ふと思いついたように立ち上がる。

まり「今からうたをうたいます」

あみ「え」

まり「歌います」

あみ「あ、はい。」

まり「わたし、今から歌を」

あみ「や、だからどうぞ!って」

まり「そう?」

まり、微笑んで「ありがとう」

あみはまだ座ったまま。

あみ「まじめんどくせー」

まり「ごほん。むねぇーに、つけーてる、マークはー……」

まり、首をかしげる

あみも、怪訝な顔で、見上げる。

まり「おほん、むねぇーに、つけーてる、マークはー…」

あみ「?」

まり「…マークは……?」

あみ「(思わず)りゅうせい」

まり「あああああああ!!」

ーーほぼ同時に

あみ「わあああああ!!」

まり、叫びながら崩れ落ちる。

あみ、後ろへ飛び退きながら。

まり「あああ!」

あみ、ぐるぐるとまりのまわりを弧を描くように歩きながら

あみ「なんだよなんだよなんだよ!!大声出すなよびっくりするからさああー!!」

まり「ひどいなんでうたったのよ!!なんで!!」

まり、ぐるぐると回るあみを目で追う。まり、弧を描くあみにならうように歩きだす。

あみ「だってあきらかに、どもったじゃん!!だって!!」

まり「なんで歌ったのよ!!」

二人、お互いを気にしながら、ぐるぐると円を描くように早足で回り続ける。

あみ「ごめんって」

まり「なんで殺したのよ!!」

あみ「ごめんって!!」

まり「え、殺したの?」

あみ「は、何が?」

まり、目を輝かせてつめよりながら

まり「マジで?なんで殺したの?なんでなんで?」

あみ「え、何を?誰が?誰を?何の話?」

まり「いや、え、殺したって、いったよね?」

あみ「一言も言ってないけど?え、なんなの?頭おかしくなったの?ちょっと前からおかしい子かもしれないと思ったけど気のせいだと誤魔化していたけどそれは私の優しさだったの?」

まり「ん?」まり、立ち止まる

あみ「ん?」あみ、立ち止まる

まり「待って待って待って」

あみ「待ってるし、てか動いてねーし、どこにもいかねーし」

まり「冷静になろ」

あみ「極めて冷たく静かだし」

まり「え、それ怖いやだ」

あみ「どっちだよ」

まり「…あのね、なんで歌ったのって怒ったわけ、さっき、うち」

あみ「うん知ってるし」

まり「……その、なんとかし、って、語尾にし?つけるの、やめない?超感じ悪いんだけど?」

あみ、睨みつけて

あみ「はあ?むしろやめねー。やめねーし!しししーし!」

まり「は、なに、しししーしって」

あみ「やめねーしのアクセントで

しししーしだよ!死死死ー死だよ!わかれよ!おまえ日本人だろ?モンゴロイドか!ワンダーガールか!」

まり「…あのね、なんで歌ったの?って怒ったあと、うち、なんかわかんないけど、いきおい?で?なんで殺したの?みたいにいえば、自白とか引き出せるんじゃないかな、って、思ったの、あの瞬間に。で、ごめんって、あやまったじゃん?それって、完全にボロ出したっていうか、自白したことにさ、なんない?」

あみ「つーかまず誰も殺してねえのに自白できねえから!」

まり「え?ほんとに殺してないの?」

あみ「ばか?ねえ、ばかなの?君はほんとにばかでござるの?」

まり「えー、ござるとか、傷つくー」

あみ「そこじゃなくね普通!ござるに傷ついてどーすんだよお前、戦国時代いったらしゃべる度傷つくわけ?」

まり「戦国時代いかないもん」

あみ「てか人殺しの冤罪の方がずっと傷つけてると思いますが、気は確かなの君は?」

まり「やー、血管うきでてるー。こわいー」

あみ「……ぴかーん。あたし気づいた、あたし超優しかったわ。あたまおかしい子にあたまおかしくない人と同じように接してた少し前のあたし超優しい」

まり「全然優しくない。続き歌ったときから微塵も優しくない」

あみ「だからごめんなさいっていってんだろーがよ!!つーか!!」

まり「なですか!!」

あみ「つーかつーかつーか!なんでウルトラマンなわけ?」

まり「そこが私のセンスだよね。修羅場に歌うウルトラマン、みたいな」

あみ「知らねーしお前のセンスとか!歌えるわたしにもびっくりしたし歌ったあたしが怒られんのもマジ意味プーなんだけど褒められるポイントだと思ったんだけどマジで!!」

まり「ていうかさあ!!

あみ「なんだよ!!」

まり「まーひーじゃない?うちら?」

あみ「ま、まーひー?」

まり「うん、なんかこんな意味わかんないことに熱くなってさ、超まーひー」

あみ「まーひーってなに、何語?」

まり「ああ、ごめんごめん。コンサバ女子てきな雰囲気でちゃってるから使っちゃうのね、うち、そういうナウいフレーズ?」

あみ「んん?んんん?でた!!意味不明なでた!馬鹿ふたたび!!単語いっぱい来るねきたね?全然

 

 

 

うわ、なにこれ、新しい修羅場パターン?

新世界へようこそパターン?

 

 

ほとんどかわんねーよな

かわんねーんだよじつは

 

間違ってるかどーか、何でお前が決めんだよ

 

酒のんだあと、鼻くそすげーとれない?

酒のんだあと鼻の穴に指はいれない

 

 

トムくんは音楽を聴く人だとする。でもジャズやクラシックは聴かない。でも聴いたことがないわけではない。

 

コーヒーが似合うと言われたとする。確かに好きではあるが自意識がかかわってくる。

コーヒーが似合うといわれたくて飲んでいるように思われたくはない。

 

あたしはここにいるし!自分探しとか、馬鹿じゃねえの?

 

 

ベスパとかに乗っていて欲しいと言われる

どちらかというとカブが好きだ。っていうか免許持ってねえし。

 

 

(ニ〇一ニ年六月三日 iPhoneのメモ)

 

 

 

本日の東京の感染者数 ニ七二人

 

iPhone  高橋  啓佑