アオアルキルキア

不定期連載

いつかの断片

 

 

 

同じ言葉しかいえないロボット

バス停のようにずっと同じ位置に立っている。

 


「あ、僕ですか? 僕は、元犬です。貴方は?」

「猫です」

「まるでボーイミーツガールですね」

「どこが?」

「よく言われてるじゃないですか、犬と猫って、忠実、従順とか自由気まま、奔放とか、まるで性別みたいに、対照的なものみたいに」

「じゃあ、こういうのは知ってますか?」

「どういうの?」

「これは、人が言ってるんですけどね」

「はい」

「犬好きの人は、猫のような恋愛をするそうです」

「ほほう」

「ということは、猫好きの人は?」

「犬のような恋愛をするんですって」

 


「僕ですか? 僕はとかげです」

「トカゲ」

「トカゲさんは

 

 

 

「あの、すごいことに気づきました」

「なんでしょう」

「大塚さんって、優しいんですね」

「は?」

 

 

 

「優しさに気づける人が、優しいんです」

「そうですか、いまじゃあここ、やばいですね」

「やばい?」

「優しい人しかいないじゃないですか」

「じゃああれですね、ここ、天国ですね」

 


形があって、

人になる

 


じゃあ約束しませんか?

約束?

人になったあと、会いましょうよ

 

 

 

会った人に

 


無理無理、記憶消されるんですよ

 


バファリン越えましたね」

「風邪薬」

「半分は優しさって」

「はは」

 


「合言葉を決めようか」

「絶対言いそうもないけど、普通の会話で出てくる言葉にしよう」

「たとえば?」

「たとえば、好きなものは何ってきかれたら」

「ああ、それはきっと、みんな、一回くらいはきかれるかもね」

「一回どころじゃないかもね」

「そういうやつを決めようよ」

「じゃあ、愛が好きっていおうよ」

「え?」

「きっと誰も言わないよ」

「そうかな、キザな人はいいそうだよ。あとは童貞っぽい作家とか」

「いいそういいそう」

「キザな人は、愛してるっていうかもしれないけど、愛が好きとは言わないよ、きっと」

「なるほど」

「童貞の作家はよく、わからないけど」

「っていうかまあ僕らも童貞だからね」

「私は童貞じゃないよ」

「え?」

「女だもん」

「ああ、そういう意味か」

「色々びっくりしたね今」

「ほんと、男子って生まれる前から子供だね」

「いや、それおかしくない?」

「愛っていう名前の子を好きだったら、いうかもよ」

「急に話戻ったね」

「じゃあ」

「じゃあ?」

「愛するのが好き」

「おお」

「絶対誰も言わないね」

「きっとね」

「じゃあ、それで」

「何が好きって、きかれたら」

「愛するのが好き」

 

 

 

「何がほしいか聞かれたら愛が欲しいっていうことに決めてる」

「きめんなよ」

 


前世じゃないですよね、これ

たしかに

今世だね

「プレ前世?」

 

 

 

 


「好きって言われたら好きになっちゃうんですよ」

「何それ。手当たりしだいに好きっていう人だったらどうすんの?」

「それはさすがにわかります」

「でもその人にいわれてもなんないってことだね、嘘じゃんもう」

「その人が嘘なんですよ」

「そうかな、好きって思いは本当だけど、軽いだけでしょ」

「そんなの、無差別テロじゃないですか」

「はは」

「誰も幸せにしない」

 

 

 

最後に

並べられたお菓子を見ながら

「ねえ、何が好き?」

 


で終わる。

 


本と映画

書店と映画館

 


なんか延々と続くの、あれ、

すげーねむくなんだよあれ、すげー眠くなんの

 

 

 

 

二〇一七年五月八日、iPhoneのメモより

 

(本日の東京の感染者数 三五三人)