アオアルキルキア

不定期連載

まだ、ない。

まだコロナではない日記。

まだコロナではない日記、と毎回書くのもどうかと思ってきた。しかし、途中から始めてしまった。急に書くのをやめたら、その日からコロナにかかったと思われるかもしれない、と思い、ずっと冒頭に添えている(誰も思わない)。いつも自分で自分を苦しめているようだ。阿保だろうか。

 

今日お仕事は、お休み。仲の良いメンバーと昼過ぎから集まり、Skypeで話をした。最近、毎週末オンラインでいろんな友達と会っている。実際には会わないが、顔は合わせている。声も聴いている。

このあと、町で会って、僕たちは口に出して、久しぶりと、いうのかどうか。

少し気になる。

「会う」とは、どこからどこまでが「会う」なのか。

今はまだ「オンラインで会った」と説明する段階だけれど、ほんの少し未来になったら、新しい言い方が生まれるかもしれない。

実際に会うことは「会う」のまま、「オンラインで会う」ことは別の言い方が生まれるのではないか。

新しい言葉は、女性が作るのだと、いつだったか、先生からきいた。歴史の先生だったか、国語の先生だったか。漢字しかなかった世界に、ひらがなを生んだのは女性だと先生はいった。昔ではなくて、つい最近でも、女子高生が流行り言葉を作り、それがテレビで広まり、上の世代も使うようになったりする。

どこかの女性がオンラインで会うことを、たとえば、すごく短くして、オンる、とか。オラるでもいいか。オラオラ系みたいだ。ちょっと違うかもしれない。では、ライる? それはラインをするときにいっている? じゃあ、オンラる、はどうか。

 

新しい言葉は、だいたい省略と飛躍から生まれる。

省略は僕にでもできるが、飛躍が難しい。思い切りがいい人は、女性に多い印象がある。

僕が躊躇するような言葉の使い方を、きっとどこかの女性が、ひょいと飛び越えて、簡単になじませるだろう。そういうことを影響力のある女性が言うと一発で広まる。もしかしたらすでにもう、あるのかもしれない。僕の耳に届いてないだけで。

でもそれはまだ、発明されてない、ということにしておく。

僕なんかの耳にも届いたら、その言葉が市民権を得たということになる。

小説や映画や漫画で、未来に飛び越えるSFの世界がある。現代から、未来や過去に移動したとき、あまり言葉が通じないことがない。それはそれでいいと思う。ちゃんと通じることに説得力があるのなら。未来にはいろんな機械や世界があって、描くことが多すぎる。だから言葉は、なおざりにされることが多い。
でも、今と違っているものが、言葉であってもいい。
タイムマシンで未来に行く。同じ国なのに、最初は話が全然通じない。でも機械が発達しているので、すぐに翻訳できて、困らない場面に移行する。言葉の変化は何も語られない。
でもどんな翻訳機であっても、わずかの期間に発明された流行り言葉は拾わない気がする。
もし、オンラる、というのが今から少し未来に、流行ったとしても、それは未来の翻訳機の中には残らない。

インスタ映え」から「ばえる」になった新しい言葉は、数十年後も、誰かがいっているだろうか。熱中する、ハマる、課金をいっぱいしちゃうみたいなことを「あれは沼」といいだしたのも最近だ。翻訳機で、沼は、ただの沼に訳されるだけだろう。

生まれてすぐに消える言葉。とっておきたくなる。
だから、なるべく僕は、使ってみる。その言葉が死なないように。せめて僕が生きている間は、その言葉も生かしておきたい。そんなことを考える。

「オンラインで会う」ことを一言でいう言葉はまだない。もしかしたら省略も飛躍もなく、このまま馴染んでいくかもしれない。でも誰かが発明するかもしれない。

 

僕は少しだけワクワクしている。