アオアルキルキア

不定期連載

三釁三浴をつめる

今日はお休み。

 

新しく住む部屋の契約書が先に送られてきた。一日一箱といいつつ、お休みなのでたくさんつめた。でも今日書くことは三箱目にいれたものについて。

今住んでいる僕の部屋は、白い部屋だったので、新しく買ったものは、白で統一した。テレビ台もその一つ。でもテレビ台として買ったけれどテレビは上に置いていない。アロマディフューザーや、CDプレイヤーを置いて使っていた。段ボールより幅があったけど、分解すると棒と板になった。引っ越して、また組み立てる。

それから、カセットコンロ、キャンプ用品を入れた。

人が来たとき、カセットコンロは鍋パーティをするときに使うので、持っている。登山用品は、大げさなものではなく、山登りに行く際に使うもの。カッパとか、ゲイターとか、ヘッドライトとか、いい匂いのする虫よけスプレーとか。もうしばらく、山登りをしていない。虫よけスプレーは、かなり余っている。使用期限とかあるんだろうか。隙間に、お香を入れた。アロマディフューザーは加湿器でもあるので使っているからまだ入れない。

 

そのままでは入らないものが、分解すると入るようになるのは、数学だ。面でとらえると大きいものが線や点といった部品になり、四角い体積に収まる感じ、うまくいえないけれど、すごいな数学は。すごいな人間は。(そんな大げさなことではない)。

 

しまいながら、僕の部屋には香りが出るものが多いな、と改めて気がついた。

若いとき、同世代の男たちは香水をつけていた。僕は変なところで自意識が過剰で、香水をつけている自分を知られるのが嫌で買えなかった。

モテたいのに「モテたいと思っている」と思われるのが嫌、といった気持ちだとか、容姿にもコンプレックスがあるせいで「こんな容姿の自分が香水をつけている」なんて思われるのも嫌、だった。でも、体臭がするもの嫌なので、その結果お香を焚くということにいきついた。誰かが部屋に来る前や、自分がどこかに出かけるときだとかにお香を焚く。

それが香水の代わりだった。

最近はアロマディフューザーの使い方も覚えて、ちょくちょく使い始めた。ボディクリームをぬることもあるし、髪がぱさぱさになってヘアオイルなんかもつけるようになった。僕からは色んな匂いがするかもしれない。
キャンプ用品の虫よけスプレーも、長い髪の女の子が使うシャンプーみたいな匂いだ。山の中にまで香りを持っていってどうする。気にしすぎて、むしろかっこ悪い。
全然、男らしくない、かもしれない。

 

三釁三浴(さんきんさんよく)という四字熟語がある。

広辞苑にすら載っていなかった。

生活の中でまず書かないであろう釁という文字はお香のことをいうそうだ。

浴、とはお風呂のこと。何度も、湯水で体を清め、何度も、身体に香をぬる。そうして、大切な人に会う。それだけの準備をして、会おう、という心構え。相手のことを大切に思う心を、言いあらわす言葉だという。

 

身体につける匂いに気を使うことも含めて「周りによく思われたい」という自意識は、確かに恥ずかしくも思うが、こういう言葉を見ると、それが必ずしも自分のためだけのことではなく、会う人への思いやりからくるものだともいえるわけだ。
電車の中で、たまたま隣の席に座る女性の香水が、あまりにも強く匂い、その刺激に気持ち悪くなることもあるが、それだけ大切な人とこれから会うんだと思えば、少しは優しい気持ちになれるかもしれない。

 

「コロナが落ち着いたら、会おうね」

「状況が良くなったら、遊ぼうね」


今、大切な人にかける言葉はそういった未来への約束ばかり。
来るかもしれない未来に向けて、僕が準備できることの一つが見つかった。
友人たちと晴れて、会うことができたとき、リモートワークで人とも会わなくなり、不潔極まりない姿になったまま、会うことは避けよう。
何度でも身体を清め、お香やアロマの香りがするように準備をしておこう。

 

(本日の東京の感染者数 六三九人)